同定 |
開張11o内外.触角は基節は白色で各節白色と黒褐色とを交互にする.頭部は黒褐色で前面を粗い白色の剛毛で被われる. Labial palpus は黒褐色で末節は基部と末端に白色となる. 前翅は褐色がかったオレンジ色で基部と前縁の1/4付近から始まり内縁の1/3付近に終わる白線がある.白線と白線の間は黒味がかった茶褐色となる. 外側の白線は白くぼやけ褐色がかったオレンジ色になる. 前縁2/3付近には, ほぼ楕円形の白紋があり翅頂付近で褐色がかったオレンジ色にぼやける. 白紋の周りは不定形な黒味がかった茶褐色になる. 褐色がかったオレンジ色の部分が白色となる個体もある.
♂交尾器. Valvaのsacculusの先端の突起とcostaaの先端の突起はコブ状になる. Aedeagusは剣状の長さの違うcornutiを2個持つ. 1個は他方の2倍の長さになる.
♀交尾器. Lamella postvaginalisは上部に剛毛を備えた弧月状. Antrumは漏斗状, 中央部でややくびれる. Signumを持たない.
所見一Razowski&Kumata
(1985)はsakaiellaの総模式標本の中から台湾産の1♀(V.1930,col1.Sakai)をlectotypeに指定し, 北海道定山渓産の標本をparalectotypetypesとした. 2つの産地が余りにもかけ離れているので別種かもしれないという疑惑を持ったが,筆者が本州で採集したsakaiellaと思われる標本は♀交尾器の形状では台湾産のlectotypeと一致し,♂交尾器も北海道産のparalectotype(8.VIII,, coll.
Matsumura)と一致した.同時に間野隆裕氏の台湾の採集品の中から見出した南山渓産の1♂は,北海道や本州の標本と交尾器も一致した. 日本から記載されたpyrochalca Meyrick,1931,は今まで検討されることがなかった. 筆者は1989年に大英自然史博物館でpyrocalchaのholotype (Fig.14)を調べる機会を得た.この標本は腹部が失われており, 交尾器を調べることはできなかったが, 筆者所蔵の同種と思われる標本と照合して見た. Sakaiellaによく見られる斑紋が白くなった個体でsakaiellaとの斑紋の差異は全く認められなかった. Pyrochalcaの模式産地がsakaiellaのparalectotype の産地と同じである点も考慮し両者が同じ種である確信を得た.2つの名称は記載された年が同じだが,出版の日付からsakaiellaを有効とし,pyrochalcaをsakaiellaの同物異名とした.
日本に広く分布するものと思われる.前翅の翅表の色は褐色がかったオレンジ色から白色まで個体により変化が多い.8月に多く採集される.この種と斑紋がよく似ている種としてはautoclinaやロシア(極東〕と韓国に分布するP. subsuzukiella Lvovsky,1985, があるが, sakaiellaよりはいずれも小型なので判別できる.
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