2009年3月18-24 ルソン島北部撮影・採集遠征
中尾健一郎
今回のライトトラップ用機材:100Wクリアー水銀灯1灯、安定器、20W誘蛾灯1本(何と1本を日本に忘れてきた)、40W電球型昼白色蛍光灯、180W車用DC/ACコンバータ、330W220→100V変圧トランス、折りたたみ鋸、はさみ、ロープ(緑布セット用)
撮影機材:Canon Kiss DigitalX, 60mm F2.8 Macro,とパナソニックの外付けストロボだけ、Compact Flash 計10GB。
採集用機材:捕虫網(結局1度も使わず)、酢酸エチル殺虫管(小型を1本だけ)、糖蜜用スプレーは今回使わず、以上の重量27g
日時場所
3/18 (水)
マニラ
HISの中華航空格安チケットで10:45成田発、荷物チェックイン時に重量オーバーを指摘される。ザックの方に重たい変圧器を移し、何とかお許しを得る。台北経由で4:30頃マニラ着、ターミナルはニノイアキノインターナショナル(NAIA)、最近の他のアジアの新しい空港と比べるとかなり見劣りする。レンタカー屋のオフィスはターミナルの外。客は少なく、レンタカーまで使ってフィリピン旅行する客は少ないらしい。車体はサンテラ(サニー)、走行距離7万kmは仕方ないとしても、左ハンドルのマニュアルはかなり不安。マレーシア、ボルネオ、タイ等のほうが日本と同じ右ハンドルではるかにまし。採集の生命線であるシガーライタソケットが生きていることをまず確認。
空港をでると噂には聞いていた大渋滞につかまる。多少近道しようとしたのが間違いの元、路上には、トライサイクル、ジープニー、バス、歩行者があふれかえり、進むことも戻ることも困難。苦労してようやく環状道路を見つけ、北部のケソンシティー方面目指すが、東京の環7と違い、何故か直進が困難、予定のホテル到着は既に夜10時過ぎ。
3/19
バギオまでの道
マニラから目的地のルソン島北部中央山地は300km以上なので、朝食後直ぐにケソンのホテルを出発。環状線からルソン北部ハイウエーに入りとりあえずバギオを目指す。このハイウエーはGoogle, Yahooの地図には出ていない。要するにまともな地図はないので、スーパーマーケットでロードマップを入手、漸く道路状況がわかるようになった。平野の中に突然、火山のMt.Arayatが現れ、左にMt.Pinatuboが見えるとハイウェーはそろそろ終わり。のどかな田舎道をとろとろと走り続けることに。バギオに入ったのは既に午後2時半過ぎ、驚いたのはこのルソン第2の都市で夏の首都には町の中に全く信号が無い。そこにマニラと同じくありとあらゆる車両が群れをつくっているので交通はカオス状態。北部のボントクへのHaisema ハイウエーに入れたのは既に5時過ぎ。
3/19
Benguet州Panasai
バギオの市街地を抜けたと思ったが、人家が続く、日没も近づいたので、Panasai集落の近くでナイターすることに決める。標高は恐らく2000m以上、見晴らしは良いが、足元に広がるのは松林と畑、広葉樹林の姿は無い。結局、このような植生が最後のSagadaまで続いていたことが後でわかった。周囲には「緑布」に使えそうな樹木、草は全く無く、仕方なく、小屋の壁に白布を張ってライトをセット。期待はしていなかったが、暗くなると意外に多数の蛾が飛来。標本では見ていたフィリピン特産の白いヒトリモドキ Asota isthmia、シンジュキノカワガ、派手な赤いヒトリガ、マエアカヒトリモドキ?等。数として多いのはキンウワバ、キヨトウ類、耕作地が混ざるという周囲の植生のためだろう。この夜はここで車中泊。
夕闇のせまるバギオ北東部の採集地見下ろすと松林ばかり
マエアカヒトリのそっくりさんですが腹が黄色で別種なんですよね 派手なヒトリガ、最初の1匹はうれしかったですが、どこの採集場所でも毎晩の常連.ボルネオでは見かけないのでフィリピン特産でしょうか
東南アジアの常連ヒトリガ、何種か混ざっているらしいですが、とりあえずAmerila astreusにしておきます. Antheraeaの1種、これまでのフィリピンから購入した標本には見かけない種のよう、どなたかご存じだったら宜しく.
西表で採集されたアケボノヒトリArgina argusです.これもどこでも出会う普通種 フィリピン特産の白いヒトリモドキAsota isthmia、期待していたのですが、何とか1匹だけ出会えました
国内では1度もであったことないのに最近、東南アジア遠征の度に採集するシンジュキノカワガ マエアカヒメシャクTraminda aventiariaに似て色が茶色い種、沖縄本島で撮影していますが、フィリピンにいました
オビガもフィリピンにかなり種類が分布しているはずですが今回はこれを含めて3種だけ 今回、スズメガの新顔は無し、これもフィリピンから太平洋諸島まで分布する普通種のGnathothlibus eras
シダメイガ
の1種
と思います
カレハの
Streblote
castaneaの雄
3/20
Mountain州Mt.Data
前夜の採集場所から暫くさらに北に移動すると、ルソン島国道の最高地点2399mの標識あり。駐車スペースも無いので、素通り。周囲の植生は同じ。Mountain-provに入り、Mt.Dataに来ると、適当なホテルがありここで1泊することに決定。やはり周囲は殆ど松林。部屋は2階でベランダ採集も可能、水銀灯をセット。車で途中のView Pointへ移動しここで車電源から誘蛾灯と大型昼白色蛍光灯をセット。ここは子供たちのたまり場らしく、私が、ナイターをセットする様子を興味深そうに見ている。白布を張って、点燈する頃になると一段とにぎやかに。暗くなって蛾が飛来すると、私に逐一報告。小学生は英語教育を受けているので、大人よりましな英語を話す。Hey!!, Black & White beautiful moth, small green moth, What is the difference between butterfly and moth?など。8時過ぎても帰ろうとしないので、Why you don't back to your home to watch TVと質問すると。「おじさん、僕たちの村には電気がまだ来てないのでテレビは見られないの。」とのこと、なるほど、それで、周りが全くの暗闇になったわけだ。
ホテルに帰ろうとすると、突然右前タイヤがパンク。そのままホテルの駐車場へ。
部屋のベランダにも意外に多数の蛾、まず目についたのは真っ赤で白点を持った黒い帯のある弩派手なヒトリガ、大型のMilionia, 壁に止まっているのはアマミキシタバ。
左端がフィリピン国道最高地点2339m バギオから北で多分最もまともなMt.Dataホテル.
ベランダ採集が意外に成果あり
集まってきた子供たち カタゾウの1種
多分フィリピン初記録のアマミキシタバ、やや大型だが斑紋は台湾産と同じ ミドリリンガに斑紋が出た種、今回のお気に入り画像の1つ
フィリピン初記録かな?Dactyloplusia impulsa
Milionia coronifera
じゃないような気がする
3/21
Mountain州Sagada
朝、ホテル駐車場でパンクしたタイヤを交換。修理にはボントクの町に行くしかなく、スペアー無しで移動。Sagadaへの分岐点でイスラエル人ヒッチハイカーペアを拾う。Sagadaはボントクとは違う先住民族の村なので文化が異なり、「棺おけ洞窟」 Cave of hanging coffinで特に欧米人に人気の村。標高はやはり2000m近いのだろう。やはり松林主体だが、緑は多い。観光案内所前でペアをおろし、村の入り口付近にあるロッジにチェックイン。2階の部屋はベランダ採集に最適と思われたので、2泊お願いする。
外に出かけて、ナイターをしたかったが、ロッジの入り口にはゲートがあり、建物にも夜は鍵をかけるようなのでベランダだけに集中することにする。
Sagada付近の風景、Mt.Data周辺よりは広葉樹の割合が多い.残念ながら乾季でどこもカラカラ.それでも結構、蛾は飛来 Sagadaで有名な何千もの棺桶がつりさげられている洞窟のある石灰岩の岩山、このあたりこんな風景多し
今回、ただ1匹のアオシャチ S. umbrosa Scoparinaeらしいです
ボルネオでも見かけたコヤガ? 超大型
コメツキ
Borbotana
nivifascia
Dudusa
minor
ミナミヒトリモドキ♀ シャチホコ
だと思うの
ですが
クロモンエグリホソバの同属種、多数いて同定不能
Nyctemera
lustuosa
Problepsis
delphiaria
ヒメシャク
不明種
3/22
Mountain州Sagada
前夜のナイターのため、午前中は部屋で朝寝を貪り、昼過ぎに下に下りてゆくと、ロッジの主人?が、タイヤの空気圧が減っていますよパンクではとのこと。青くなっていると,うちはオートショップもやっているのでといってポンプを動かし、エアを注入してくれる。結局、この夜が最後のナイターとなったが、前夜とは蛾相が多少異なっていたのが興味深いところ。
弩派手なヒトリガ
フィリピン特産?
今回、よく見かけた
コケガ
ベニモンノメイガではなくてAgathodes caliginosalis 日本にもいるかも Amplypterus panopus
3/23
Mountain州
SagadaからIfgao州Banaue
Sagadaからマニラまでは350km以上距離があるので、7時にチェックアウトしまずBontokへ、朝のため、町の中に自動車整備工場は見当たらず、運を任せてBanaueへ向かってMt.Polisの峠越え。これがやはり失敗。10km進んだあたりで、左前のタイヤからシューという音。既に殆どペッちゃんこ。日本だったら、車を拾って町に戻るところだが、ここはフィリピンの山の中なので、Bontokに引き返すことに。ゴトゴト音を立てながらやっと整備工場前に到着、タイヤ2本の交換をお願いする。
10時ころからMt.Polisの峠越えに再チャレンジ。Bontokの街中を走っているのが、4駆又はそれなみの車である理由が良くわかる道、谷の沢部分は殆ど池、尾根近くはボコボコのダート。がけ崩れの跡多数でブルの作業で足止め頻繁。Mt.Polisの峠にやっとたどりつく。ここも多分標高2500m近く。流石に松林は姿を消し、やっと自然林的は樹高の低い照葉樹林が広がる。今回のルソン島北部でようやく熱帯高地の林にたどり着いたが残念ながら既にナイターを行う時間なし。
Mt.Pulisへの道
パンクで引き返すことに
修理中
Mt.Pulisの峠
2300m程度か
次回の採集予定地
有名なBontocの棚田、あんまり美しいとは思わない
3/23
Ifgao州Banaueからマニラ
Banaue付近はReice Terrace(棚田)で有名なところ。かなり観光地化されており、道路沿いでナイターやる場所は見当たらない。ただ、バギオ周辺よりは湿潤な感じで、周辺を探せば多少まともな採集地あるかもしれない。後は殆どひたすらマニラに向けて車を走らせる。途中、スペイン風の地名、SantafeとSanojeの間の峠道がさらに標高低い樹林の広がる場所。もし次回くることあったらナイターにチャレンジか。夕方、薄暗くなり、マニラに近づいてくるとまたまた渋滞激しくなる。相変わらず無信号で横から、トライサイクル、ジープニー飛び出し、割り込みも激しいので運転疲れる。一般道でのマニラ帰りは諦め、少し遠回りして、来るときに使った、ルソン北部ハイウエー経由に変更。空港にたどり着いたのは既に午前1時過ぎ、ホテルは諦め、空港駐車場で仮眠。
3/24
マニラから成田
レンタカーを返却しようとすると場所がわからない。渋滞の中、やっと探し当てたのはフライトの2時間前。今じゃ、他のアジアの空港ではRent a Car Returnの案内板整備されているのだが、つくづくマニラは遅れていると思う。何しろ、空港への案内表示板も最後の交差点だけだった。一人で来るところではないことを身にしみて感じつつチェックインへ。標本入れたスーツケースはいつも通り全くのノーチェック。
ところが、荷物チェックにザックを通すと、変圧器を取り出して、これはだめとのこと。
何で?と質問すると、"This is too heavy" 重たいもの持ち込んではいけないという規則なんか無いだろう?と反論すると、Heavy, heavyを繰り返すだけ。変圧器が何か判らないらしいので、通電してあげますといってもだめ。フライトまでの時間も少なくなったので仕方なくこちらもギブアップ。
最後までトラブルの多い遠征でした。
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